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▲暗闇祭りとして知られている県祭り

 
 起源に諸説はあるが、室町時代には既に痕跡があった。とにかく新暦6月5日は宇治県祭りの日である。祭りの復活当初は講中とよばれるグループが「しきたり」を守っていた。闇夜の中に男御輿と女御輿が練り歩く・・・。特に無光には人一倍神経質だという。
  その後、この祭りの意図が見えなくなっていった。市内中延々と夜店が絶えることなく連なり、人々は溢れかえる。県祭りは「夜店祭り」と理解され深夜に神事が司られているという祭りの本体などほとんどの人々の記憶から失せてしまった。
 「暗闇祭り」そして、男御輿、女御輿・・・わたしにはその正体が閃いた気がした。
 男御輿と女御輿は男女を指す。さらに暗闇から連想するもの。それは、「性交の場」に他ならないのではないか。
 農業を守るための人手は必要である。だが、近親結婚は拙いことを体験上知っていた。それらの弊害を避けるためにも、新しい血の導入が必要であったのだ。どうやら村長たちの知恵が「村」を活性化させるために仕組んだものと考えるのが自然である。
 これが室町期に盛んとなり、江戸期にも引き継がれた。その後一旦は廃れたが、形を変え、楽しさの継承という意味だけが受け継がれ今日まで続いてきたのである。
*  *  *

▲小説の舞台となる木津川流域
 一方、県祭りの楽しさに反し、古都奈良の寺院勢力と日本の中央「都」の勢力において、権力争いが絶えず、悲惨な生活に明け暮れていた地域も山城である。
 潤沢な水量を誇る木津川。「津」とは港を意味する。豊かな水量は物質の運搬のみならず大地を潤すに十分であった。
 それがもたらす肥沃な農地の支配には特別な意味もあった。権力を握った覇者たちの生活を潤わせる貴重な米倉であったためだ。しかし、米のみでなく、ほおね(大根)、日常必要な秋葱(ネギ)、狛なす、柊菜(みず菜)、柿、ニンジン、破竹(モウソウチクタケノコ)らも盛んに栽培されたが、新鮮さが生命線。京、奈良の台所に届く時間が勝負である。
 しかし、弱みにつけ込むのは支配者の常。次々に関所が設けられ通行税を、困窮のどん底に喘ぐ人々にも容赦なく科す。生活を脅かす輩に対し、つまりは楽しい農村を踏みにじる「権力者たち」に対し人々の不満は募る。
 さらには中央権力に実力がなかった。天下の将軍といえど、妻の日野富子に振り回され、奈良の僧侶たちさえもおのおのの利権にこだわっている。
 「独立」の精神はいよいよ山城人に膨らんでいった。
 ※この物語はフィクションです。

 
■著者プロフィール■
地上 亮(じがみ あきら)
昭和27年生まれ
 綴喜郡井手町在住

 京都府立鳥羽高等学校教諭。著書に「日本水滸伝」があるほか、「椿説弓張月」「日本水滸伝・」「アライブ」などの作品をホームページで発表している。

■バックナンバー
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