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花、発見
 田植えの苗も生えそろい、一枚田が緑の毛長の絨毯になる頃です。なだらかな棚田の田面に風がそよぎ、稲の葉身がしなやかに倒れ、次々に緑の波を伝えていきます。
 緩やかに広がる棚田の一番高いところに湧水池があります。池の周りのコナラ群落も軽やかに新緑芽を開き始めました。やや楕円の切れ込みある浮葉の緑で埋め尽くされた池の水面に、白く点在する花が見えます。真ん中が黄色く目立ち、子どもの両手を広げかけたような白い花が咲いています。ヒツジグサです。
 
紹 介
 スイレン科に属し、地下茎から茎を伸ばし葉を浮かべ、6月頃から花弁が10枚ほどの白い花を咲かせます。一般に鑑賞用として栽培されているスイレン(睡蓮)の野生種がこのヒツジグサということになります。夏場には水面を緑で覆っていたヒツジグサの浮葉は秋になると枯れて、水の中に潜っている沈水葉だけになって冬を越します。沈水葉は池の魚にとって大好物であるらしく、池に鯉を放したため絶滅してしまったという記録があります。今でもヒツジグサが可愛い白花を咲かせる池には「鉄魚」が住んでいますが、仲良く暮らしているためか絶滅には至っていません。とはいうものの、ヒツジグサの浮葉で覆われている池の縁にジュンサイが蔓延るようになってきました。この楽園も後数十年も経てばジュンサイで覆われた池に変わっていくような気がします。
 未の刻は午後1時〜3時のことですが、丁度、この時間帯に花を咲かせるのでヒツジグサの名が付けられたということです。しかし、朝9時頃、田の水管理に出掛けた時、一面に可愛い白花を咲かせていました。由来は他にあるのかも知れません。
 
環 境
 ヒツジグサが生育できるきれいな水質状態が保持できている池は山城地域では数えるほどでしょう。絶滅危惧植物であるヒツジグサと同様、きれいな水の池沼でしか生きられない「姫河骨」も山城地域ではほとんど見られなくなりました。ヒメコウホネも絶滅危惧植物であり、8月のお盆頃に、水面から突き出たちょっとオシャレな黄色い小花を咲かせます。水中の泥底をのぞくと、白い太い骨が埋まっているように見えます。コウホネほど太くはないのですが、コウホネは水面から茎を伸ばして高い位置で葉を広げるのに対して、ヒメコウホネは水面に葉を浮かばせるので区別がつきます。
 厳密な水質調査をしていないので断定できませんが、ヒメコウホネはヒツジグサよりも汚い水質環境でも生育できると考えられます。なぜなら、ヒメコウホネの生育環境にはジュンサイが多く取り巻いている光景が見られます。ヒツジグサの生育する水環境に富栄養化が起こり、ジュンサイの占める割合が多くなってくるからです。
 
今後のつきあい
 吉田千秋作曲、琵琶湖周航の歌の原曲を示します。
 「おぼろ月夜の月明かり
   かすかに池の面に落ち
    波間に浮かぶ数知らぬ
     未草をぞ照らすなる」
 ヒツジグサが一面に浮葉を広げていた大正時代のきれいな琵琶湖が目に浮かんできます。水本来の持っている浄化能力を超えた時点から水質汚濁が始まります。ヒトが快適な生活を求めれば、その代償として川に流す生活排水が、きれいな水でしか生きられないヒツジグサの命を縮めていきます。近隣の溜め池で「ヒツジグサが生きている」と近寄って見ればスイレンでした。栽培種であるスイレンが身代わりとして比較的汚い水質環境で花を咲かせてくれています。それで補完的に成立していて、疑問がわいてこない環境変化への鈍感さを知るべきでしょう。


 

■バックナンバー
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