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花、発見
 稲刈りの後は、収穫の喜びで沸きます。収穫を終えると、今度は秋祭り。南山城村の田山花踊り、笠置の泣き相撲、和束の天満宮秋祭り、加茂の恭仁秋祭り、木津の布団太鼓台祭、山城の饗応相撲、宇治田原の田原祭、城陽の大篝火、京田辺の大住隼人舞、八幡のずいきみこし、久御山の還幸祭など、山城地方各地で秋の音色が聞こえてきます。
 子供達の歓声や祭り囃子の喧噪から逃れるように神社の裏山へ回ると、切り藁で一面覆われた田面が見渡せます。刈り取り時期が早まったせいか、切り株から生えた二次稲が青々と伸びています。畦畔の山際の刈り込みに目をやると、小花が集った黄色い花がひときわ目立っています。オミナエシです。
 
紹 介
 オミナエシ科に属し、草丈約1メートルの多年生草本。秋に、直径5ミリ程度の黄色い小花をつけます。花期を終えて枯れかかったオミナエシを嗅ぐと、醤油の臭いがします。これを乾燥させて煎じたものを敗醤とよび、含まれる精油成分が血行を良くするといわれます。
 このオミナエシよりも全体的に大きく、白い花をつける、オトコエシ(男郎花)が存在します。これもオミナエシと同様、山城地方では見かけることが少ない絶滅危惧植物の仲間です。黄色く盛った花を粟飯に、白く盛った花を米飯に見立てて、「女飯(おみなめし)」「男飯(おとこめし)」とよんだのを語源としているといわれています。
 
環 境
 オミナエシは種子をつけますが、栄養繁殖も行います。地際から葉を放射状に広げた、よくタンポポで目にする形ですが、このような生活形態を「ロゼット」または叢生 とよび、地下茎でつなぎ、娘ロゼットを増やしていきます。
 農業形態の変化により下草刈りが疎かになり、成長の早いススキなどに日照を遮られるために、オミナエシの茎を立てるのに充分な光を得られなくなり、絶滅の危機に瀕しているのが現状です。しかし、オミナエシが全く見られなくなった山城地域のススキの原やアカマツやコナラの林床には、結構、オミナエシのロゼットが残っているといわれます。
 ロゼットは、花を咲かせる条件が整うまで休止状態を保つ防護機能であるため、10年、20年単位の長い生命力を持ち合わせているはずです。
 
今後のつきあい
 「女郎花 秋の野風にうちなびき 心一つを誰によすらむ」と、古今集で藤原時平が詠み、オミナエシの端正な姿から美しい女性を描き出しました。「萩の花 尾花葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花」と、万葉集で山上憶良が詠んだ秋の七草では、ひときわ黄色い色彩を放つものとしてオミナエシが登場します。
 草刈りの怠慢やセイタカアワダチソウなどの競争力の強い帰化植物の繁殖によって、古来から生息してきたオミナエシの生活をする場が失われつつありますが、ロゼットの姿で、辛抱強く、花茎を思いっきり立てられる日が来るのを待っているのです。それに比べて、オトコエシの方は長い蔓枝を伸ばし、自身を中心に枝分かれをして、娘を増やしていきます。
 ヒヨドリバナと間違われることが多くありますが、繁殖に関しては勇猛です。その点、オミナエシは何と辛抱強く、そして健気なのでしょうか。 草地に立つあなたの靴が踏んづけていませんか、オミナエシのロゼットを。


 

■バックナンバー
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