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花、発見
 籾殻を焼く臭いで、秋の深まりを知ります。燻炭は稲作文化が生んだ最高の土壌改良材です。山城地方の土は花崗岩質の赤黄色土壌で占められています。木津川流域周辺の田畑の土は砂質で、保水力が弱く、山間地になるほど粘土を多く含むようになり、水はけが悪くなります。燻炭を混ぜると、水はけが良くなり、植物の根に、たっぷり酸素が行き渡るようになります。加えて、燻炭に含まれるカリや石灰の成分が酸性の土を中和する働きもあるそうですが、実際のところ、かなりの量を土に施さない限り、市販の燻炭の袋に書かれているほどの効能は無いようです。また、稲は一般植物に比べて格段にガラス質を多く含みます。稲の茎を鎌で刈り取る時の「シャキィ」の音がそれです。ガラス質の成分は「珪素」ですが、石として地中に残るので、いつ、どんな時代に、どのような種類があったかが分かります。その証拠となるガラス成分を、何とシャレた宝石の名で、「プラントオパール」とよびます。  燻炭の後始末にと晩秋の枯れ田に立ち、畔沿いの山際に目をやると、薄紫のベールに包まれた白い花房が目立っていました。フジバカマです。
 
紹 介
 キク科に属し、草丈1メートル余りの多年生植物で、万葉の昔から日本人に親しまれてきました。山城地方で、秋口に、土手縁でよく見かけるのがヒヨドリバナ(鵯花)です。花房全体が薄紫色を帯びるフジバカマに比べて白く、枝振りが大胆です。フジバカマの葉は縁が多少裏に反り、茎下部の葉は三つに深く切れ込み、上部にいくにつれ、切れ込みがなくなります。ヒヨドリバナには、切れ込み葉がありません。
 
環 境
 山城地方においても、ヒヨドリバナは山地で多く見られるのに比べ、フジバカマは平野部の草原地や堤防で稀に見られることがあります。現在も、木津川支流の堤で細々と生きていますが、ほとんど見ることのできなくなった絶滅危惧植物です。草刈りをしていて偶然見つけ、喜々として帰り際、かなり高額の値札を下げてポットに植えられたフジバカマが、園芸店の軒先に並んでいるのを見た時のむなしさと裏切られたくやしさを、今でも忘れることができません。
 枯れたフジバカマから放たれる芳香は桜餅の葉からのと同じ「クマリン」で、昔から風呂の芳香剤として利用され、中国では「香草」とよばれます。このクマリンに加えて、クスノキ科のシナモンの樹皮から作られる「シナモン」。私たちが幼少の頃よく口にしたニッキはこのシナモンと同じ仲間ですが、世界最古のスパイスの一つです。また、世界でもっとも多くの国で愛飲されている「コーヒー」。アカネ科のコーヒー豆を焙煎して放たれる香りはエチオピアを発祥としているそうです。クマリン、シナモン、コーヒーは世界三大植物名香といわれ、世界の人々の食生活を特徴付けて、文化を築いてきました。
 
今後のつきあい
 「ふじばかま ぬしは誰ともしら露の こぼれてにほふ野べの秋風」と新古今集で詠われているように、夏から秋への季節の移りを見事に白色で表し、愁いを漂わせています。「萩の花 雄花葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝顔の花」万葉集に詠まれた山上憶良の秋の七草に登場する藤袴は、本当にフジバカマであったのか、一面広く咲いていたヒヨドリバナではなかったのかと疑いを持つ学者もいます。雄花(ススキ)とともに白色原野の幻想を抱かせるフジバカマを、秋の七草で、唯一、香りを放つ植物としてとらえ、香りが文化を継承する偉大さを知りつつ、後世に伝えねばなりません。


 

■バックナンバー
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