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伝えたい宇治茶
伝えたい宇治茶
第一回製茶共進会の審査報告
(表紙)(上)と特別賞のページ(右) (京都府茶業会議所所蔵)
伝えたい宇治茶 伝えたい宇治茶
第1回製茶共進会特別賞受賞を記念して建立された宇治製茶記念碑(平等院門前)。
毎年、製茶記念日(10月1日)に製茶記念式典と茗魂祭が行われる。

 1868年江戸幕府が倒れ、明治維新となった。
このことは宇治茶の世界にも大きな影響を与えることであった。宇治の茶業界は幕府の庇護(ひご)下で、覆い下栽培による抹茶の製造の独占的特権を与えられ、同時に将軍家を始めとして大名などから注文を得ていた。財政的には旧来の支払い法を強制されるなど、苦しい面も見られるが、これらの商習慣が一夜にして瓦解(がかい)したことは大きな痛手であった。もとより茶は嗜好品であって、必需品とは言えない。社会制度が変わって注文主がいなくなった宇治の茶師たちの苦悩は大変なものであったと思われる。
 しかしこの時までに、宇治やその近郊の茶師たちは賢明にも新たな茶を生み出していた。それは宇治田原の永谷宗圓が創り上げたと言われる「蒸し製煎茶・青製煎茶・宇治茶製法」であり、宇治の覆い下栽培の茶芽を使って揉んだ「玉露」である。
 これらの茶は抹茶と違い、急須を用いて飲む茶で当時形式化していた茶道にあきたらない層の人々に好まれていた。宇治の茶師たちはこれに注目し、危機打開のため玉露・煎茶の製造に 本格的に乗り出していく。
 また明治維新前後に洪水のように入ってきた西洋の文物を購(あがな)う輸出品としても茶は生糸と並んで重要な地位を占めている。この際輸出品として全国各地から集められた茶は品質にばらつきがあり、粗悪品も多くて輸出先で大問題となった。幕末ペリーが来航して伊豆の下田で饗(きよう)された宇治茶のすばらしさに魅せられ、今後茶は重要な輸出品となるであろう、と予見した言葉が危うくなったのである。
 輸出品の品質向上に資するため、京都府は明治5年(1872)に第1回京都博覧会を開く。これは内国人31,103人、外国人770人、学校教師生徒7,531人を集めて大成功となり、我国の博覧会の先駆けと言われている。
 さらに明治10年に東京内国勧業博覧会が開催され、明治12年には輸出港横浜で第1回製茶共進会が開かれ、京都府からは50名が受賞し、「宇治茶製法」がその精緻(せいち)さ故に博覧会特別賞を受賞している。
 このようにして宇治茶は幕府解体という最大の危機を乗り越え、新しい工夫を加え日本国内はもとより世界を見据えて進んでいったといえよう。今後も京都府の茶業界が日本茶の最大最高のブランド「宇治茶」の名を守っていくことを期待している。


■バックナンバー■
  【伝えたい宇治茶】    
  G茶の機能性(カテキン類)について   E碾茶(抹茶原葉)の合組
  F緑茶の機能性(テアニン)   D宇治茶の新たな躍進
      C宇治茶を支えた品種
      B茶園景観のかたち
      A全国茶品評会の開催
      @90年前の宇治茶スイーツ
       
  【やましろ昔話】    
  K炭山の田植地蔵さん   E北稲八間の年越し
  Jお産ぎつね   D送り狼
  Iだんごやすみ   C天狗の手
  H寒がり天狗   B嫁盗り地蔵
  G田辺の送り竹   A紙鯉
  Fころ柿   @踊るきつね
       
  【なつかしの道具とその周辺】    
  K田植えの農具   E千歯扱き ―収穫の農具(1)―
  J麦の収穫   Dサツマイモの収農具
  Iみずぐるま   C水田除草用具の移り変わり(2)
  H唐臼、石臼   B水田除草用具の移り変わり(1)
  G唐 箕 ―収穫の農具(3)―   A祝園の居籠祭に用いられる犂
  F収唐 箕 ―収穫の農具(2)―   @祈りの農具
       
  【やましろ昔話】    
  K風に舞った花嫁衣裳   E夢絃峡
  J夜桜ぎつね   D狛犬の結び糸
  Iお亀さん   C寺田いも
  Hきつねのお礼   Bお姫ヶ池
  Gいたずら天狗   A蛍合戦
  Fお正月飾りと福の神   @雨乞い
       
  【山城地域の絶滅危惧植物を追う】    
  K石持草(イシモチソウ)   E撫子(ナデシコ)
  J猫目草(ネコノメソウ)   D桔梗(キキョウ)
  I猫目草(ネコノメソウ)   C連理草(レンリソウ)
  H寒枯藺(カンガレイ)   B狸藻(タヌキモ)
  G藤袴(フジバカマ)   A未草(ヒツジグサ)
  F女郎花(オミナエシ)   @翁草(オキナグサ)
       
  【再光の大地】    
  K炎の稲屋妻   E忍び
  J終焉   D三番星 苦悩と楽土に直面す
  I鎮圧軍総司令官「伊勢貞宗」   C教育は天王畑の神主から
  H三六星 宇治平等院にて集う   B二番星、椿井新城より去る
  G新風が運ぶ自断権   A三十六星
  F酒星   @県祭りと山城国一揆
       
  【南山城文学散歩】    
  K木津川のうた   E旧都と歌枕の地 瓶原
  J上田三四二と青谷   D笠置山と文学
  I文人憧れの地 月ヶ瀬梅渓   C五里五里の里 城陽
  H青谷梅林の歴史と詩歌   B古典文学の宝庫井手(2)
  G古歌の名所 狛と祝園   A古典文学の宝庫井手(1)
  F現代の桃源郷 南山城村   @木津川と泉橋
       
  【風土記】    
  I母なる川 木津川   D小野小町伝説と井手
  H二宮忠八と飛行神社   C富本銭と和同開珎
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  F安積親王墓と大伴家持   A明暗を分けた家康と梅雪
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  【南山城 歴史のなかのひとびと】    
  K和束で出会った『生活のうた』   E水度神社のおかげ踊図絵馬
  J南山城村に伝わる折りの行事   D高神社と多賀郷の人びと
  I絵馬に描かれた近世の木津浜   C正覚寺洪水供養石仏
  H平等院と山城国一揆   B狛と平尾の精霊踊
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  F相楽郡立濃学校の創立   @平野の勧心猿楽




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