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▲斉藤拙堂著『月瀬記勝』(月ヶ瀬八景「遍地香雲」)
天下の名勝 月ヶ瀬梅渓
南山城に隣接する月ヶ瀬は、桜の吉野と並び称される、梅の名勝です。
「梅の名所として知られる木津川上流の大和月ヶ瀬峡谷(きょうこく)は、明治の紀行文学と文人趣味の宝庫と云ってよい」(野田宇太郎「明治の紀行文学」)とあるごとく、江戸後期以来月ヶ瀬には多くの文人達が訪れました。現在月ヶ瀬村に建つ文学碑を思い浮かべてみても、頼山陽・種田山頭火・谷崎潤一郎・佐佐木信綱・・・と、錚々(そうそう)たる顔ぶれです。文人のみならず、伊藤博文・山県有朋・西郷従道といった人達も、月ヶ瀬梅渓を訪れているのに驚きます。月ヶ瀬はまさに、天下の人士の憧(あこが)れの地であったと言って、過言ではありません。
斉藤拙堂『月瀬記勝』
僻村(へきそん)の地月ヶ瀬を一躍全国に知らしめたのは、『月瀬記勝(つきせきしょう)』というたった1冊の書物でした。著者は斉藤拙堂(せつどう)。藤堂藩の儒者で、文人としても著名であった人物です。私達にとって身近なところでは、司馬遼太郎『峠』に、主人公河井継之助の師として登場する人物でもあります。
『月瀬記勝』は、乾(けん)・坤(こん)二巻、更に八葉の梅渓画から成る書物です。乾の巻は拙堂の漢文による月ヶ瀬紀行文、坤の巻は梁川星巌(やながわせいがん)・頼山陽等10数人の観梅詩を収めたものです。
乾の巻を少し紹介しましょう。乾の巻は、文政13年に、拙堂が月ヶ瀬を訪れた時の紀行文ですが、文章の技巧を凝(こ)らし、あらゆる角度から月ヶ瀬梅渓を描写しています。
まず、尾山一目千本谷での夕暮れに霞む梅、次に真福寺下の月夜の清らかな梅渓、更に雪景色に映(は)える梅、名張川を舟で遊覧しての尾山・桃香野観梅、南岸の月瀬の山上から俯瞰(ふかん)した梅林の風景、と、様々な梅渓の趣を、美しい文章で表現し尽くしています。
『月瀬記勝』を読むと、当時の梅渓が今日に比較できない程広大であった事が判ります。名張川北岸の尾山には8つの谷があり、それぞれの谷が、山上から川岸まで梅花で埋(うず)められていました。また、南岸の嵩(だけ)・月瀬は梅花が山に溢(あふ)れ谷を埋め「銀海」のようであり、桃香野(ももがの)は藁葺(わらぶ)き屋根の黄色が梅花爛漫(らんまん)の間に点在していると記されています。
月ヶ瀬は、山水の美と梅花の多さを兼ね備えており、吉野や嵐山より素晴らしい地である。中国の梅の名所羅浮山(らふざん)のみがこれに匹敵しよう。月ヶ瀬は、まさに仙境であり、「桃源境」という言葉があるが、桃よりも梅こそが仙郷にふさわしいではないかーーと拙堂は、月ヶ瀬梅渓を讃えています。
原文で紹介できないのが残念ですが、『月瀬記勝』の名文と詩は、文人達に月ヶ瀬への憧れの心を掻(か)きたたせました。「あわれ、われは幾年前よりこの月の瀬の梅に接せんことを願ひたりけん。拙堂の文を読み、山陽の詩を誦して、幾度(いくたび)その勝景をわが想像の中に画きたりけん」田山花袋の文章ですが、花袋が記勝によって月ヶ瀬に憧れたことがよくわかります。『月瀬記勝』は、漢文の教科書にも採用され、更に広く人々に知られたのです。
▲月瀬梅渓・早春の八幡橋(月ヶ瀬村発行ポストカード)
佐佐木信綱文学碑
近現代の作品からは1つだけ紹介しましょう。月ヶ瀬村石打に建つ佐佐木信綱の文学碑より。信綱は明治の短歌革新運動の主導者の1人。『心の花』を主宰(しゅさい)した歌人です。
・梅渓(うめだに)は 人すなほなり
道辺(みちのべ)に 杖あまた置き
春蘭置き わさび苗置き
代(あたひ)かける札を置き
かたへの竹筒に
買ふ人のいるるにまかす
梅清くさける山村は
人すなほなる
地元で採れた花や野菜などを、無人で販売してあるのは今日でも見られる風景。信綱は、梅渓の美しさと共に、そこに住む村人の素朴で清らかな心根に心動かされています。
今年も観梅の季節。私達も月ヶ瀬梅渓の美しさを、じっくりと充分に味わいたいものです。私自身は、人のいない夜の月ヶ瀬梅渓の風情を、最も好んでいます。
■著者プロフィール■
小西 亘(こにし わたる)
1958年、南山城村に生まれる。82年より京都府立高校に勤務。現在府立南陽高校国語科教諭。『注釈青谷絶賞』『「月瀬記勝」梅蹊遊記訳注』執筆。
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