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「あさひ」、「さみどり」などの茶の品種名を一度は聞かれたことがあるのではないでしょうか。これらは、京都府の奨励品種として、香り高く、奥深い味わいである宇治茶を支えています。しかし、品種が育成されるまでは、良いものからそうでないものまで様々な株が混じりあった「在来園」ばかりでした。 昭和初期になると、この「在来園」から優良な形質を持つ株を選び、育成する動きが出てきます。京都府での茶の育種は、熱心な民間育種家であった平野甚之丞氏や小山政次郎氏によって始まり、両氏はそれぞれ、のちに主要品種「あさひ」、「さみどり」となる株を選抜しました。平野氏は、選抜過程で、新芽の色合いと茶製造時の色合いとの相違に悩み、蒸し葉を順にガラス面に貼り付け、透視して綺麗な透きとおった色の芽を選んだと苦労話が伝わっています。また、小山氏は、茶の品質鑑定に優れ、平野氏と深く交流をしながら、品種育成に尽力されました。 その後、昭和14年から茶業研究所において、両氏が選抜した株も含めた育種試験が始まり、昭和29年に奨励品種として、これら2品種の他に「ごこう」「うじひかり」等の8品種を登録しました。「あさひ」は、てん茶として品質が優秀で、毎年全国茶品評会で上位を独占しています。「さみどり」は、手摘みのしやすさや収穫適期が長いことが特徴です。「さみどり」の存在は、収穫期に幅を持たせ、労力分散、面積拡大に大きく貢献しています。 また、平成18年に茶業研究所が品種登録した「鳳春(ほうしゆん)」・「展茗(てんみよう)」にも注目が集まっています。「鳳春」は玉露に適し、収穫時期が主要品種に比べて格段に早いことが特徴です。「展茗」は、はさみ摘みてん茶の主要品種である「やぶきた」に比べて、香味に優れ、はさみ摘みてん茶の新しい品種として期待されます。今なお現役で活躍する主要品種と新しく登録された品種は、卓越した生産技術を持つ茶生産者の方々とともに、これからも宇治茶の生産と品質を支えていくことでしょう。